外壁材の劣化が酷い場合には、塗装によるメンテナンスが難しいケースがあります。
塗装は「外壁材の劣化を遅らせるため」に行う工事で、劣化が酷い外壁材を改善することができないためです。
そのように状況が良くない外壁材は「外壁のカバー工事(重ね張り)」または「外壁の張り替え」でメンテナンスしていきます。
張り替え・カバーとは?
「張り替え」というのは、既存の外壁材を剥がして、新しい外壁材を張るという施工方法です。
「カバー工法」というのは、既存の外壁材の上からさらにカバー(重ね張り)をするという施工方法となります。
※近年では、張り替えるよりも「費用・工期」が短縮できる「外壁カバー工法」の需要が高まってきています。
このページでは、上記2種類のうちの需要が高まっている「外壁カバー工法」についての費用やメリット・デメリットについて解説していきます。
外壁カバー工法の費用単価は?
サイディングの場合は、建物の構造によって本体以外に使用役物・シーリングの「m数」など細かい計算によって変動します。
おおまかには、「外壁の施工面積×上記単価(本体・胴縁・透湿シート・役物など)」となってきます。
外壁の施工面積もそうですが、役物の「m数」も費用価格の重要なポイントであり、建物の形が複雑であるほど、「役物を多く使用するため」割高となってきます。
また、使用する本体も「デザイン(縦張り・横張り)やフッ素鋼板」などの種類も幅広く、どれを使用するかによって大きく費用は変わってきます。
外壁カバー工法の費用の目安
- 外壁の施工面積
- 建物の構造
- 使用材料(商品)
このほか、仮設足場は必ず必要となりますので、足場代も発生します。
外壁カバー工法(30坪の費用相場)の目安
工事内容 | 30坪 | 単価 | 費用(目安) |
外壁カバー工法 | 128㎡ | 11,000円~ | 1,408,000円~ |
仮設足場 | 178㎡ | 650円 | 115,700円 |
合計 | 1,523,700円 |
外壁塗装(30坪)の相場「約75万(足場含む)」と比べると、外壁カバー工法はその「約2倍」の費用がかかるイメージです
外壁カバー工法(40坪の費用相場)の目安
工事内容 | 30坪 | 単価 | 費用(目安) |
外壁カバー工法 | 156㎡ | 11,000円~ | 1,716,000円~ |
仮設足場 | 222㎡ | 650円 | 144,300円 |
合計 | 1,860,300円 |
外壁塗装(40坪)の相場「約90万(足場含む)」と比べると、40坪では「約2倍」ちょっとの費用がかかるイメージです。
外壁カバー工法(50坪の費用相場)の目安
工事内容 | 30坪 | 単価 | 費用(目安) |
外壁カバー工法 | 196㎡ | 11,000円~ | 2,156,000円~ |
仮設足場 | 278㎡ | 650円 | 180,700円 |
合計 | 2,336,700円 |
外壁塗装(50坪)の相場「約105万(足場含む)」と比べると、50坪では「2倍以上」となり、費用の差はどんどん膨らんでいきます。
その理由としては、外壁塗装は「坪数」が大きくなるにつれ、効率よく工事を行う事で費用単価を下げることができますが、外壁カバー工法は、坪数が大きくなっても「材料代・手間」の効率を下げることが難しいため、差が広がってしまいます。
外壁カバー工法が必要な状況とは?
築30年以上で老朽化している
外壁材にもある程度の寿命があり、35~40年以上経過した建物に対しては「塗装」で仕上げるよりも「カバー工法」の方が良いでしょう。
もちろん、外壁材の劣化状況によってですが、塗装を行っても下地の状態が悪くその効果が得られないケースが多いためです。
35年以上ですと、過去に2回は外壁塗装を行っていると思います。
その状態で塗装しても塗膜の密着性も悪くなるの可能性が高いため、状況に応じて「外壁カバー工法」を検討する必要がでてきます。
外壁材(モルタル)にひび割れが多数
外壁材のひび割れが、一面に対して少ない本数であれば、塗装で問題ないかと思います。
ですが、あまりにも多数ひび割れが発生している場合には、モルタル材が剥がれてしまうケースがあるため、塗装はおすすめできないでしょう。
塗装で仕上げても地震などで剥がれる不安が残るため、状況に応じて「外壁カバー工法」が必要となってきます。
外壁材(サイディング)の剥がれが酷い
外壁材(サイディング)によって、表面がボロボロと剥がれたりめくれてくるタイプのものがあります。
そのような外壁材の場合に塗装を行っても、下地が悪いため塗膜の密着性が悪く、すぐに剥離しやすくなります。
酷い場合では、「2~3年」で塗装が剥がれて、その箇所にコケが生えたりします。
外壁材の素材が悪い場合には、状況に応じて「外壁カバー工法」が必要となります。
外壁から雨漏りしている
雨漏りは、屋根からだけではなく外壁からも発生する場合があります。
たいていの場合、コーキング(防水)作業で、雨漏り解決につながります。
ですが、塗装や防水で解決しない場合や、一時的な応急処置にしかならないケースも多いです。
部分的な張替えが可能な場合は張替えを行い、そうでない場合には状況に応じて「外壁カバー工法」を行う必要がでてきます。
外壁カバー工法のメリット
外壁を張り替えるよりもコスト抑えられる
外壁カバー工法は、既存の外壁材を剥がす必要がありませんので、その分手間がかからず「人件費を抑えられる」点がメリットです。
また、剥がした外壁材の「廃材処分費」がかからないというのも、コストが下がる大きな理由の一つとなります。
「廃材処分費」はかなり上がってきており、とくにアスベスト材が入っている素材ですと大幅に費用が割高となります。
解体する手間と処分費のコストを抑えられる点は大きいでしょう。
外壁を張り替えるよりも工期が短縮できる
外壁カバー工法では、解体する手間がなくなるため「工期の短縮」につながります。
また、解体した外壁材の仮置きするスペースなども必要となってくるため、スペースがない場合には都度トラックまで外壁材を運ぶ必要があります。
そういった手間が省ける点はメリットでしょう。
外壁塗装よりも耐久性が良い
外壁塗装の場合では、最も高額なフッ素塗料を使用して「18年~20年」の耐久性です。
外壁のカバー工法は、金属系のガルバリウム鋼板材を使用した場合では立地条件や環境にもよりますが「20年以上~30年近く」の耐久性が期待できます。
ただ多少の色あせが出て美観に影響はでてきますが、素材自体には影響はありません。
塗装の数回分がコストカットできるので、耐久性の良さはメリットと言えます。
外壁塗装・張替えよりも「断熱・遮熱・遮音」などの効果が期待できる
金属系のサイディング材には、断熱材が含まれており「断熱効果」と熱を反射する「遮熱効果」、また、素材に厚みがあり「遮音効果」もが期待できます。
外壁塗装でも「遮熱・断熱効果」の期待できる塗料もありますが、やはり直接、鋼板材を張り上げる方が効果は高いでしょう。
また、張替えと比べてカバー工法では、既存の外壁材と「2重」となるため、その効果はより高まります。
「断熱・遮熱・遮音」の効果を得たい場合には、「外壁カバー工法」が一番最適と言えるでしょう。
外壁カバー工法のデメリット
外壁を張替えるよりも外壁材の種類が限られる
外壁カバー工法は、既存の外壁と2重となるため「重量」が増えるというデメリットがあります。
そのため、既存の外壁材によっては「軽量な金属系のサイディング材」の使用がメインとなってきます。
とくに窯業系のサイディングは、重量があるためカバー工法ができる外壁材に限りがあります。
正直、金属系よりも窯業系の方がデザイン性が高いため、美観面で劣る金属系しか選べないのはデメリットとなってくるでしょう。
外壁塗装よりも費用が高い
外壁カバー工法を行った場合に費用面が外壁塗装よりも「1.5~2倍」高くなるという点がデメリットとしてあげられます。
外壁塗装の費用はほとんど「人件費」が大幅にかかっていて、「塗料代」は正直そんなに高くはありません。
しかし、外壁カバー工法では「新しい外壁材」や「下地材」、「透湿シート」など、材料代が高くついてしまいます。
人件費は抑えられますが、この材料費が高いため値引きもしづらい状況にあります。
外壁カバー工法のメリットは大きいですが、外壁塗装と比較する際に費用面は大きなデメリットとなってくるでしょう。
下地の腐食がそのままになってしまう
年数が経過して老朽化した場合や雨漏りして放置してしまった場合、「下地が腐っているケース」があります。
張替えの場合には、腐った下地を交換できますが、カバー工法の場合ではそのままの状態でフタをする形となってしまいます。
よほど酷い場合には、胴縁という下地の取付けができないためカバー工法を行うことができません。
状況によって、カバー工法が行えないケースもありますので、しっかりと調査を行う必要があります。
まとめ
外壁のカバー工法とは、既存の外壁材の上に増し張りをするというものです。
手間がかからず人件費を抑えられることや、古いサイディングの廃棄処理の費用がかからないため、コストを抑えることができるのが魅力です。
ですが、外壁カバー工法もメリット・デメリットがあるので、それぞれの工法としっかりと比較して検討を行っていきましょう。