サイディングやモルタル外壁の下には、雨漏りや結露から建物を保護するために防水シートが貼られています。
この防水シートが適切に施工されていることで、サイディングなど外壁材から雨水が浸入しても、躯体への影響を妨ぐことができます。ですが、防水シートにも種類があり、仕上がりの外壁に合せた適正なものを使用しなければ、その効果も薄れてしまいます。
そこで今回は、建物にとって重要な外壁に使われる防水シートについて解説していきます。
外壁用防水シートの役割
外壁は建物を守るために、「一次防水」と「二次防水」と2段階で雨漏り対策を行っています。
その内訳は以下になります。
一次防水:「外壁材」、二次防水:「防水シート」
雨水のほとんどは「一次防水」で防いでいますが、どうしても外壁材の経年劣化や台風などの強雨での吹込みによって、「一次防水」を突破してしまいます。
その際に、「二次防水」として、建物を守るのが防水シートの役割となります。
外壁に使われる防水シートの種類
外壁に使われる防水シートには主に2つの種類があります。
一般的な住宅に採用されているサイディング外壁などで使われる「透湿防水シート」と、モルタル外壁などで使われている「アスファルトフェルト」です。ここでは、外壁に使われる防水シートについてそれぞれ解説していきます。
透湿防水シート
出典:https://www.fukuvi.co.jp/product/4/03/37
透湿防水シートとは、外部からの雨などの水分は防ぎ、室内からの湿気を逃がす役割があり、サイディング壁の2次防水として一般的に使われています。
現在は高気密高断熱の機能性の高い住宅が一般的ですが、外気との温度差が大きくなりやすく、壁内部で結露が起こりやすいというデメリットがあります。
そのデメリットを解決するのが、この「透湿防水シート」となります。
アスファルトフェルト
出典:https://www.tajima.jp/juken/index04_02.html#item-num03
モルタル外壁などで使われているアスファルトフェルトは、水分を通さないだけでなく、湿気も逃がさない性質を持っています。
素材のモルタルは、サイディングボードと違い「水分」はもちろん「湿気」に弱いため、一般的には透湿防水シートではなくアスファルトフェルトが使われています。
内部結露の問題は、その内側に通気層を設けるなど、別途対策が必要となります。
外壁用防水シートの単価と施工方法
費用単価
外壁用の防水シートは、「幅1m、長さ50m」で1本として販売されています。
メーカーによって金額は異なりますが1本当たりの金額は「5,000円~8,000円程度」です。
30坪程度の住宅に防水シートの施工をする場合の費用相場は「50,000前後」です。
施工方法
防水シートは施工方法を間違えると期待する性能を発揮できません。また施工中に破れやすいので注意が必要です。
ここでは、外壁用防水シートの施工方法を解説していきます。
下から重ねる
外壁用防水シートは基本的に下から重ねて施工します。
常に上部にある防水シートが最前面に来るように施工することが絶対条件です。防水シートの上から雨水が侵入することを防ぐためにも、防水シートは下から順番に最上階まで張り上げていくことが大事です。
防水シート同士の重ね
下から重ねた防水シートは、必ず「上下で10cm程度の重ね」が必要です。
幅が1mの防水シートには上下に10cm程度の重ね代のラインが入っています。下に張った防水シートのラインが見えないように重ねていくことで、10cm程度の重ねを確保することができます。
また、上下だけでなく左右の重ねも重要です。上下の重ねは10cm程度でしたが、「左右の重ねは30cm程度」が必要になります。
タッカー、両面テープで固定する
住宅の外壁に施工する場合には、しっかりと固定することが大事です。防水シートは壁面に「タッカーを使って固定」していきます。
タッカーは大きなホッチキスのような工具で、片手で防水シートを固定するこができるため作業効率もあがります。ただし、打ち損じなどによって防水シートが破れてしまうこともあるので注意が必要です。
窓などの開口部は防水テープと併用
窓などの開口部は、雨漏りなどが起こりやすい場所でもあります。
防水シートだけでなく「防水テープなどと併用して施工」することが一般的です。また、サッシまわり専用の防水シートなどあるため複数の防水シートや防水テープを併用することもあります。
注意したい施工ポイント
外壁用防水シートの施工方法は、細かなルールを確実に守って施工することが大事です。
1か所でも不具合がある場合には、雨水の侵入を防ぐことができなくなります。また住宅の形状や納まりによっては、さらに注意して施工した方が良いポイントがあります。
ここでは、防水シートの注意したい施工ポイントを解説していきます。
出入隅の重ね
住宅の出入隅では防水シートの重ねに注意が必要です。
出隅はすべての住宅で必ず施工することになります。防水シートの折り返しをしっかりと確保することが大事で、できる限り出隅付近での防水シートの継ぎ目を無くす方が良いでしょう。
入隅は住宅の形状によって施工する場所が無いこともあります。しかし、玄関ポーチやバルコニーなど気づきにくい場所で入隅となっていることもあります。入隅は防水シートの下に施工されたボード類も継ぎ目になっていることが多いので、入隅に施工する防水シートは二重にするなどの配慮が必要です。
軒天との取り合い
外壁用防水シートと軒天との取り合いでは、必ず防水シートが軒天よりも上部まで施工されている必要があります。
住宅の屋根を支える桁や垂木まで防水シートが張り上げてあることが重要です。軒天には通気口が設けられていることが一般的で、台風などの強風時には通気口から軒天の内部にまで雨水が入り込んでしまうこともあります。軒天よりも上部に防水シートを張り上げておくことで、入り込んだ雨水が構造体を劣化させるのを防げます。
配管、配線まわりの処理
住宅の外壁にはさまざまな配管や配線が接続されています。配管や配線を室内に通すためには、必ず防水シートを貫通しなければいけません。そのため、配管や配線まわりは防水シートと防水テープを併用して処理することが大事です。
下屋との取り合い
住宅の形状によっては、1階部分の屋根にあたる下屋がある場合があります。下屋と外壁との取り合い部分は特に雨漏りの原因になることがあるので注意が必要です。
下屋との取り合いでは、屋根のルーフィングと外壁の防水シートが重なり二重なることで防水性が高まります。しかし、防水シートの順番や納まりが間違っている場合には、防水シートが何枚貼ってあっても意味がありません。
下屋を施工する前に外壁との間に防水シートを捨て貼りするなどの配慮が必要です。
外壁のおすすめの防水シート
外壁に使われる透湿防水シートは、ハウスメーカーが独自で開発した商品も多くありますが、一般的には「タイベック」や「フクビ」と言ったメーカー製が使われています。
ここでは外壁に使われるおすすめの防水シートを紹介します。
タイベック
外壁用として使われるタイベックの防水シートは、タイベックハウスラップです。
高密度ポリエチレン不織布を建材用途に使用した透湿防水シートです。透湿性や防水性はもちろんですが、軽くて強い特徴があるため施工中の傷に耐性が期待できます。
また、タイベックハウスラップの他にも、遮熱性や防水耐久性などの8つの性能を持ったタイベックシルバーといった防水シートもあります。
フクビ
フクビの防水シートは、スーパーエアテックスKD30です。外部からの水分を防ぐ防水性と室内からの湿気を逃がす透湿性を兼ね備えた防水シートで、30年相当の耐久試験もクリアしています。
また施工性を考慮した強度で作業効率が大幅にアップします。アルミ層を付加した遮熱エアテックスRという防水シートもあります。
まとめ
外壁に使われる防水シートには、一般的に透湿防水シートと呼ばれます。
外部からの水分を防ぐ防水性と室内からの湿気を逃がす透湿性を持った防水シートです。雨漏りなどから住宅の構造体を保護する役割は当然必要ですが、外壁内部に溜まりやすい湿気を逃がしてくれる性質が重要です。
高気密高断熱の住宅では、特に壁内部での結露の発生が問題になります。透湿防水シートと通気工法を組み合わせることで住宅の耐久性を伸ばすことができます。
このように外壁の防水シートは、重要な役割を担っています。防水シートの役割や種類を知って、間違えの無い外壁工事を行っていきましょう。