外壁塗装の悪質な訪問販売では、相場よりも費用が高く、必要のない工事でも危機感を煽って即日契約(即決)を迫ってくることがあります。
理由は相見積もり(比較)をされたり、冷静に考える時間を与えてしまうと、断られてしまうからです。
その強引な営業手法である訪問販売でのトラブルは多く、毎年「消費者生活センター」へ数多くの相談が寄せられています。
そのような訪問販売で焦って契約してしまった場合、「クーリングオフ」という制度を使えば契約の解除(キャンセル)を行えます。
ですが、クーリングオフも適用されるケースと適用できないケースもあるため注意が必要です。
ここでは、クーリングオフ制度について、ご紹介していきます。
クーリングオフ制度について
クーリングオフとは?
クーリングオフとは、訪問販売や電話営業などで契約した後でも、冷静に考え直す時間を消費者に与えて、一定期間内(契約日から8日以内)であれば無条件で契約を解除できる特別な制度のことです。
冷静になって、やっぱり工事を取りやめたい場合には、工事の契約を白紙に戻すことが可能です。
クーリングオフは、トラブルの多い訪問営業などから消費者を守るために設けられた制度です。
単純に、契約後に「やっぱり気が変わったから解約したい」と思って、気軽に契約解除ができる制度ではありませんので、その点は注意が必要です。
クーリングオフの適用で守られること
クーリングオフが適用されることで契約書や約款に記載されている内容に関わらず守られることがあります。ここではクーリングオフの適用で守られることを紹介していきます。
契約の解除
クーリングオフをすることで締結した契約を解除することができます。
支払った金額の返金
着手金などのすでに支払った金額の返金を要求することができます。
キャンセル料や違約金は不要
契約書や約款の中に解約時のキャンセル料や違約金の記載がある場合でも、クーリングオフが適用された場合には、支払いは不要になります。
原状回復の請求
クーリングオフが適用された場合には、現状回復の請求が可能です。
外壁塗装でクーリングオフが適用されるケース
このような場合に、クーリングオフが適用できます。
- 契約した日を含めて、8日以内の場合
- 施工業者の事務所で契約を行っていない場合
- 訪問業者(飛び込み)との契約で、自分から呼んで契約をしていない場合
- 契約書にクーリングオフの注意書きが記載されていない場合
- 現金3000円以上の契約の場合
- 日本で契約した場合
悪徳業者の場合、ほとんどが訪問販売で営業活動を行っています。
万が一、悪徳業者で契約をしてしまった場合やそうでない場合でも、冷静になって納得がいかない時は、クーリングオフを使って契約の解除を行っていきましょう。
工事が着工していてもクーリングオフ出来る?
契約後でも「8日以内」であれば、工事が着工していてもクーリングオフすることができます。
施工業者が、「商品や材料を購入」しても支払う義務はありませんし、「進めてしまった工事を元に戻す作業」に関しても施工業者の負担となります。
すべて、8日以内に工事を始めた業者の責任となります。悪徳業者の場合では、「工事着工後にクーリングオフは適用できない」と断れるケースもあります。
そのような場合でも、クーリングオフは適用されますので、悪徳業者に惑わされないようにしましょう。
8日過ぎてもクーリングオフ出来る場合もある?
クーリングオフの適用期間は「8日以内」という決まりがありますが、例外もあります。
事実と違う内容の説明を受けた
施工業者が、消費者に対して「事実と違う内容の説明」を行ったり、威迫したりして「間違った誤認や困惑をしてクーリングオフが出来なかった場合」には期間に関係なくクーリングオフすることが可能となります。
このような状況で、施工業者とトラブルになった場合には、「消費者生活センター」に相談してみましょう。
契約書を交わしていない
工事を口約束で行い、契約書を交わしていない場合にはいつでもクーリングオフをすることができます。
クーリングオフが適用されないケース
契約してもキャンセルできない場合
外壁塗装の契約後「8日以内」であっても、キャンセルできないケースもあります。
下記のようなケースでは、クーリングオフが適用されないため注意が必要です。
- 自宅ではなく施工業者の店舗や事務所にて契約を結んだ場合
- 施工業者を自分で呼んで見積もりを取り契約に至った場合
- 過去1年以内に工事を依頼した訪問業者への再依頼の場合
- 個人ではなく法人同士の契約の場合
- 現金3000円未満の契約の場合
- 日本以外で契約した場合
きっかけは訪問販売(飛び込み)でも、「施工業者の店舗・事務所」で最終的に契約してしまった場合には、クーリングオフ対象外となりますので、これにはとくに注意が必要です。
ですが、やむを得ず(無理やり)事務所で契約した場合は例外になることがあります。
クーリングオフは、基本的に訪問販売での悪質な被害を減らしてくことが目的です。それ以外でのやり取り、契約に対してはクーリングオフできないので注意が必要です。
クーリングオフが適用されない契約方法
クーリングオフの期間内であっても適用されない契約方法があります。
それは基本的には「訪問販売以外の契約方法」となります。
チラシ・HP・TV広告・知り合いの紹介などからでの問合わせ
訪問販売などからの営業ではなく、ポストに投函されたチラシを見て自身で問い合わせをした場合にはクーリングオフが適用されません。またHPやTV広告、知り合いの紹介などから問い合わせをした場合も適用されません。
知り合いの紹介の場合は連鎖販売取引に関連する場合はクーリングオフの対象となり得ます。(連鎖販売取引とは、知り合いも利益目的で施工主に工事を紹介する事)
説明会や塗装セミナー
外壁塗装業者の中には、外壁塗装の説明会や塗装セミナーを実施している業者もいます。説明会やセミナーへ参加した際に契約した場合も、クーリングオフが適用されないことが多いです。
クーリングオフのやり方
クーリングオフする場合には、施工業者に通知します。通知の形式方法は、「はがき、封筒、FAX」のどれかを出していきます。
「はがき、封筒」の場合には証拠を残すためにコピーを取って保管することがおススメです。
クーリングオフ記載内容
- 通知タイトル名(クーリングオフ通知書)
- 申し込み日(契約日)
- 契約施工店名
- 契約した際の担当営業名
- 商品名
- 工事金額
- 契約をキャンセルする意思表明
- 申し出した日
- 自分の住所
- 自分の名前
上記を記載して、施工業者に「はがき、封筒、FAX」のどれかを送付しましょう。
確実な方法は内容証明郵便を送る
稀に、本当に悪徳業者の場合には上記書類を捨ててしまい証拠をなくしてしまうこともあるそうです。そのようなケースもあるため、「内容証明郵便」を利用して確実にクーリングオフするやり方もあります。
内容証明郵便は、郵便局で送ることができます。業者(送付先)、自分(送付元)、郵便局とで、同じ書類をそれぞれが保有することになります。
発信日だけでなく、書面の記載内容も証明されます。
内容証明郵便の書き方について
内容証明郵便を送る場合には、いくつか決まりごとがあるため注意が必要です。
内容証明郵便は3通作成
業者(送付先)、自分(送付元)、郵便局で3通の同じ書面を作成します。
書面の文字数が決まっている
1枚に書ける文字数が決まっています。
縦書きの場合は、「1行20文字以内×1枚26行以内」
横書きの場合は、「26字以内×20行以内」、「20字以内×26行以内」、「13字以内×40行以内」
のいずれかになります。
書き方は縦・横とどちらでも可です。
句読店やカッコは1文字となり、カッコは2つで1文字となります。
枚数が2枚以上になる場合には、ページ間の割印が必要になってきます。
使用できる文字
文字は「漢字、かな、カナ、数字」が使えます。
英字は契約施工店名や商品名に限り使用ができます。
訂正の仕方
書き間違えた時には、訂正箇所に2重線を引いて、ご自分の印鑑を押します。
そして、その近くに「正しい文字」と、削除した「文字数・訂正した文字数」を記載します。
年月日とそれぞれの名前と住所の記入
郵送した年月日と差出人(ご自身)及び受取人(契約施工店)の名前と住所を必ず記載していきます。
書面の作成方法
書面の作成方法は、パソコンでも問題ありません。
手書きの場合には、鉛筆よりも消えないペンで書いた方が良いです。
封筒の記載方法
封筒の記載もどのようなものでも問題ないです。
書き方は、普通の郵便と同じ記載方法で大丈夫です。
ですが、「中の書類の名前や住所と相違がなく」、同じでないとだめです。
悪徳業者はクーリングオフを妨害してくる?
悪徳業者のクーリングオフ妨害方法とは
悪徳業者の営業手法は「訪問販売」がほとんどです。そのため訪問販売で契約した場合には、その業者が悪徳業者である可能性はあり得ます。
悪徳業者では、クーリングオフの対応に応じないケースがあるので注意が必要です。
- 契約書にクーリングオフの記載がない
- そもそも契約書がない
- 契約後にすぐに着手金を請求してくる
- 契約後に連絡が取れなかったり、ごまかして8日間を経過させようとする
- 工事をすぐに着工して、クーリングオフできないと虚偽の発言をする
- クーリングオフのハガキや書類を受け取らない
悪徳業者の場合では、クーリングオフの説明がないのはもちろん、申請を妨害しようとします。
上記のケースでは、ご説明した通り、すべて「クーリングオフの対象」となりますので、冷静になって対応していきましょう。
クーリングオフを拒否された第三者機関へ相談を
悪徳業者などによってクーリングオフを拒否された場合には、第三者機関へ相談をしましょう。契約やクーリングオフに関しては消費者生活センターでも対応方法などの草案に乗ってくれます。
また弁護士会や法テラスなど法律の専門家のアドバイスを受けることもできます。外壁塗装や建築に関する知識が豊富な専門家に無料で相談することができるので、クーリングオフを拒否された場合にはすぐに相談することが大事です。
クーリングオフが使えなくても契約を解除するには
チラシや広告へ問い合わせをした場合などクーリングオフが使えなくても契約を解除するには、業者と話し合いをする必要があります。ここではクーリングオフが使えない場合の契約の解除方法を紹介していきます。
依頼主都合で契約を解除したい場合
依頼主都合で契約を解除したい場合には、契約書や契約約款の内容にしたがって手続きを進める必要があります。外壁塗装の契約書に記載された内容を確認し、契約の解除で発生するキャンセル料や違約金の有無を調べます。着工前であれば業者の実質的な損害が少ないことから、キャンセル料や違約金を請求されないこともあります。
しかし工事に向け人員の確保や材料の発注を行っているケースもあります。依頼主都合で契約を解除したい場合には早急に業者との話し合いをする必要があります。
業者都合で契約を解除したい場合
業者都合で契約を解除したい場合には、業者の過失を明らかにした上で、契約の解除を申し出ましょう。ですが、業者の過失が明らかでない場合には、契約の解除に対応してもらえないこともあります。
業者と話し合いをしても進展が無い場合には、消費者生活センターなどの第三者機関へ相談する方法もあります。消費者生活センター以外にも弁護士会などに相談するのも良いでしょう。
最後に
外壁塗装の訪問販売(飛び込み)では、強引な営業手法を行う業者が多く、トラブルがよくおこります。とくに、一人暮らしのご高齢の方を狙った「ぼったくり工事」、「手抜き工事」の被害が数多くでています。
そのようなケースが多いため、訪問販売と焦って契約しても冷静になって考えたり、相談できる時間を与えてくれる制度がクーリングオフです。
間違って契約してしまった場合でも、「8日以内であればスムーズに解約キャンセル」ができます。もしクーリングオフのことで、施工業者とトラブルになった場合には、「消費者生活センター」へすぐに相談していきましょう。