外壁塗装には「30年持つ」と言われている商品があります。
実際、30年という数字は一般的な外壁塗装よりも長めに設定されており、何とも絶妙な数字です。
この数字に信憑性があるなら、気になる方も多いでしょう。
今回はそんな、外壁塗装で30年もつ塗料について見ていきましょう。
外壁塗装で耐用年数30年を実現できるのか?
かつて、外壁塗料といえばウレタン、シリコン塗料が当たり前でしたが、今や多くの種類があります。
しかし、その耐用年数は良くて高耐久のフッ素系塗料で「20年」、無機塗料で「23年」程となっており、30年という数字には程遠くなります。
また塗料の耐用年数はメーカーが公表しているもので、太陽光や雨風などを人工的に作りだした環境下での試験を元に算出されているものです。
当然、実際の建物に塗布した際のデータではないので、細かい数字としてはずれが生じてくるものになりますし、多くの実験データがそうであるように、この数字はあくまで理想的な環境下でのものであり、実際の耐用年数は公表されている数字よりも若干短くなることが多いようです。
そして、現在まで、国内の大手塗料メーカーである「日本ペイント株式会社、関西ペイント株式会社、エスケー化研株式会社」の3社には30年の耐用年数を発表している商品はありません。
大手3大塗料メーカーでは、外壁塗装で耐用年数30年もつ塗料は未だに実現できでいない状況です。
耐用年数「30年塗料」は訪問販売の営業トーク?
ではよく聞く「30年塗料」とは何なのでしょうか?
訪問販売では、30年もつと言われる塗料がよくすすめられています。
その塗料は、株式会社アペティーが開発した「ラピス」という塗料です。
ラピス塗料とは?
ラピス塗料は、自然石と無機質骨材(石やレンガ)を主成分とした、セラミック系の塗料です。
セラミック系の塗料なので、「無機塗料」と同等かそれ以上の高耐久が期待できるのは間違いありません。
施工する場合には、塗膜の厚みなどの調整が必要で、熟練の技術が必要です。
そのため、材料費はもちろん、施工にも手間がかかるので費用面はその分高額となってきます。
30年もつというのは本当なのか?
30年もつと言われている「ラピス」ですが、正直まだ販売されてから30年以上経過したお宅がないので実績がありません。
そのため、実際に30年持つのかどうなのかは「わからない」というのが答えです。
また、メーカーの公式にも「期待耐用年数」が30年持つという明記がされてなく、「一般の塗料よりは長期間持つ」という記載しかされていません。
大手3大メーカーで販売されている「無機塗料」と同等のセラミック系なので、「23年~25年程」(良い環境の場合)は期待できそうな感じはしますが、30年もつかはわかりません。
訪問販売の話も嘘ではないですが、少しオーバートークをしているようにも感じますので、慎重に検討された方が良いでしょう。
長期の耐用年数が期待できる塗料は?
30年塗料の実績は不透明ですが、国内大手3大メーカーでも販売している、フッ素や無機塗料であれば「20年から23年」持つと言われており信頼性も高い塗料です。
フッ素系塗料
こちらは耐用年数に加えて、光沢感に優れており、大きなビルや施設などに使用されることが多くありましたが、近年では住宅用にも用いられている塗料になります。
耐用年数は、「18年~20年」と従来のウレタン、シリコン塗料よりも優れた耐久性を発揮しています。
光触媒塗料
近年では、室内インテリアとしても人気の光触媒ですが、塗料としても優秀で、太陽光や雨風を利用して外壁に自浄作用をもたらします。
フッ素系塗料と同等の耐久性ですが、コストはフッ素よりも高めになります。
無機塗料
こちらは、現在多く流通している塗料の中では最長の耐用年数を誇ります。
あまり聞きなれない名前ですが、他の塗料が原料に石油などの有機物を主成分としているのに対し、無機塗料は鉱物やレンガ、ガラスなどを原料としています。
無機物は紫外線などによる劣化がないため、100%無機物の製品は半永久的な耐久性を持っています。
塗料では100%無機物では出来ないため、有機物との混合で出来ているのです。
無機塗料のメリット
無機塗料のメリットは、何といっても対候性が挙げられます。
太陽光や雨風に対する影響の少なさでは他の塗料の追随を許しません。
無機塗料のデメリット
一方でデメリットとしてはひび割れしやすい点が挙げられます。
弾力性が低く、外壁がひび割れると、一緒に割れてしまう事があるのです。
また、大きなデメリットとしてコストの高さも忘れられません。
耐用年数が長い塗料を使用する場合の注意点
耐用年数が長い塗料を使用していく場合、一度施工をしてしまうと当分の間やり直しができません。
やり直しもできますが、耐久性の高い塗料は費用が高額なので、その分無駄になってしまいます。
そのため、塗料選びはより慎重に行っていく必要があります。
立地によって適する塗料が変わる?
外壁塗装というものは実は様々な要素が関わってきます。
建物の材質はもちろん、その建物の「立地、即ち日当たりや気候、海からの距離による塩害被害、また劣化状況」などで、適する塗料は変わってくるという事です。
いきなり耐用年数の長い塗料を使ってしまうと、実はその塗料が合わなかったということが分かった時に後悔する結果になってしまいます。
耐用年数が長いからという理由だけで安易に選んでしまうと、間違った塗料を選んでしまう可能性があるので注意が必要です。
シリコン塗料もおすすめ?
シリコン系塗料は数々の実績があり、商品によっては無機塗料の約半分程度の費用で工事が行えます。
初めて塗装を行う場合、費用を抑え安心面を考量して塗料を選んでいきたい場合ではシリコン塗料がおすすめでしょう。
主流の塗料という事で種類も豊富にありますし、何よりも職人さんたちも扱いなれている塗料なので、安定した工事を期待することが出来ます。
とくに無機塗料は職人さんの腕次第でもその耐用年数が変わってくるものであり、普段慣れていない工事になるとやはり少し不安も残ります。
また日本は決して安定しているとは言えない気候です。
無理して高額な商品を使用するよりも、実績がある「シリコン系塗料」を使用して、様子を見ながら「10年~15年」サイクルで塗り替えるという選択肢もありでしょう。
ココがポイント
表記されている耐用年数の数字だけに捉われず、様々な情報を総合的に判断することがとても大事です
最後に
30年もつと言われている「ラピス」という塗料があります。
ですが耐久性が良いことは間違いありませんが、実際に30年もつかどうかの確実性はありません。
そのため、3大メーカー塗料の「フッ素」や「無機塗料」などど比較して、検討していくことが大事です。
30年塗料を薦めてくる訪問営業では、ラピス以外でも「自社製オリジナル塗料として30年を実現できた」という話を持ってくることも多いようです。
自社オリジナル塗料というものは、大手メーカーの塗料に少し混ぜ物を加えているものがほとんどで、基本となる大手メーカー塗料の耐用年数と大きく変わってくることはありません。
このような信頼性に乏しい塗料の提案をしてくる訪問販売もいますので、即決などせずに他の業者でも塗料の相談をしながら施工技術や費用面含めて比較していくことが大事です。