ALC壁(軽量気泡コンクリート)はサイディングやモルタルと並んで、優れた機能を有する壁材です。
主に、ビルやマンションなどで多く採用されている外壁材です。
このALC壁も雨や風、紫外線の影響で劣化してしまいます。
そのため、塗装によるメンテナンスが必要となりますが、どれくらいの費用が掛かってくるのでしょうか?
ALC壁の特徴や最適な塗料などについてもあわせてご紹介します。
ALC壁の特徴について
ALC壁のALCとは、「Autoclaved Lightweight aerated Concrete」の頭文字をとったもので、オートクレーブという装置を使って養生した軽量気泡コンクリートのことです。
コンクリートは、一定の基準で固まらせるため高い温度と水分で保つ必要がありますが、装置内部を高圧力で維持することが可能な耐圧装置であるオートクレーブを使うことで、軽量気泡のコンクリートが出来上がりました。
ALCの主成分は「珪石、セメント、生石灰」などの「無機質材料」です。
ALCは、内部に気泡を含んでいて、通常のコンクリートと比べて「4分の1の重量」と軽量であることが特徴です。
軽量ですが、しっかりと強度が保たれています。
ALC壁の利点
耐久性が高い
一般的なコンクリートは、現場で固めまるため強度には差ができてしまます。
ですが、ALCは工場であらかじめパネル生産されてから現場に運ばれます。
JIS規格に則ってしっかりと品質が保たれているので、耐久性もあり安心できます。
耐用年数は、「50年」とも言われています。
遮音性、遮熱性、防火性に優れている
また、ALC内部の気泡が音を吸収してくれるため、遮音性に優れているという特徴もあります。
さらに、内部に気泡が空気の層を作り、熱の伝わりを抑制してくれるため断熱性に優れていて、熱の伝わりやすさ(熱伝導率)は、通常のコンクリートの10分の1です。
夏は外の暑さを吸収せずに涼しく、冬は外の寒さを吸収せず室内の暖かさをぎゅっと閉じ込めてくれます。
また燃えにくい耐火構造をしているため、防火性に優れているということもできます。
ALC壁の弱点
防水性能がやや低い
吸水性が高い素材のため、内部の気泡に雨水などが侵入すると膨張したり、ひび割れたりします。
防水性が低いため、塗膜の劣化がみられたら早めに塗装を行った方が良いでしょう。
コーキングがあり、劣化する
ALCは工場でのパネル生産のため、パネルとパネルをつなぎ合わせて建物を作っていきます。
そのため、つなぎ目が多くなります。
つなぎ目が多いということは、つなぎ目から劣化しやすいということにもつながるため、しっかりとシーリング材で補強する必要があります。
ALC壁の劣化症状と塗り替え時期は?
塗膜劣化
ALC壁を保護している塗膜が紫外線などの影響で劣化し、変色や退色し、さらに劣化が進むと手で触った時に手が真っ白になる程粉状のものが貼り付きます。
ALC壁は塗膜により防水機能を保持しているので、塗膜が劣化したら「保護機能」は失われてしまいます。
塗膜の劣化は「8~10年」を目安に目視できるほど壁面に現れます。
そのため、ALC壁の塗り替え時期の目安として、「10年~15年」周期が良いとされています。
ひび割れ
建物全体に衝撃があって、パネル同士のつなぎ目で緩衝できない場合に、ALCパネルがひび割れることがあります。
ひび割れた部分に雨水が入ると漏水につながるので、シーリング材の充填や補修材を用いて適切に対処することが大事です。
塗り替え時期に入っていたら、補修と塗装をセットで行うとベストです。
シーリング劣化
ALC壁で一番多い劣化が「シーリングの劣化」です。
ALCパネルは工場でパネルを生産し、パネルをつなぎ合わせて建物や壁を作るため、つなぎ目が多くなります。
つなぎ目にはシーリング材を充填し、しっかりと塞ぎます。
ですが、シーリング材は紫外線に弱く劣化しやすいため、シーリング材が劣化すると、つなぎ目から雨水が入り込んでしまいます。
ALCは防水性を備えていないため、漏水してしまいます。
シーリングが劣化していないかは、定期点検などで特に注意して点検し、異常が見つかった場合には可能であれば補修した方が良いでしょう。
ALCパネルの破損
ALCパネルの破損の原因は様々ですが、例えば地震などで破損し、パネル自体が剝落の恐れがある場合には早急に補修しなければなりません。
補修が難しい場合には、張り替える必要がありますので、専門家に相談して対処していくことが大事です。
ALC壁の塗り替え費用は?
モルタル壁の塗り替え費用は、「塗り面積」+「仮設足場」+「付帯部塗装」の合計で費用が算出されます。
そのほか、使用する「塗料の種類」によって、費用も異なります。
参考価格表:シリコン塗料使用の場合
建坪(塗り面積) | 塗り面積価格 | 仮設足場 | 付帯部塗装 | 合計 |
20坪(86㎡) | 34.4万円 | 12万円 | 10万円 | 56.4万円 |
30坪(128㎡) | 51.2万円 | 14万円 | 10万円 | 75.2万円 |
40坪(156㎡) | 62.4万円 | 16万円 | 12万円 | 90.4万円 |
塗装方法によって値段は変わりますが、一般的なローラー仕上げは「約4000円/㎡」の価格となっています。
上記の単価では、「外壁3回塗り、高圧洗浄、下地調整、各種養生、現場管理」の費用も含まれています。
コーキング工事は、別途費用が発生します。コーキング工事の費用単価はこちら>>
ALC壁に適した塗料は?
下塗り材
微弾性フィーラー
ALCパネルのような、ひび割れが発生しやすい外壁材にには、微弾性フィラーがよく使用されています。
微弾性フィラーは、弾性(伸び)があるため、ひび割れに対して追従し、ひび割れの発生を抑止する働きがあります。
また、フィラーを使用することにより、凹凸がある壁面を平滑にし整えて、上塗りを均一に仕上げることができます。
本塗り材(中塗り・上塗り)
シリコン塗料
シリコン塗料は耐候性のある塗膜が作られるため、吸水性の高いALC壁の弱点をしっかりと補ってくれます。
またシリコン樹脂自体が汚れにくいという性質があるため、汚れから壁を守ってくれます。
費用的にも塗料ランクの中でも安すぎず、高すぎずちょうど中間のバランスの取れた材料です。
定期的なメンテナンス費用を考えるとシリコン塗料でも十分かと思います。
フッ素塗料
フッ素塗料の風雨、気温の変化にとても強いのが特徴です。また紫外線に強いという特徴もあります。
光沢感のある塗料で、光沢も長持ちします。そして耐久性が高いという特徴もあります。
シリコン塗料の耐久性が12年~15年程度であるのに対し、フッ素塗料は15年~20年です。
ただ、価格が高いというデメリットもあります。フッ素塗料は、一斗缶が「6万円」前後します。
一軒でだいたい、「2~4缶」使用しますので、シリコン塗料よりも平均して「10万~20万円」ほど、費用が高くなる傾向にあります。
ALC壁を塗り替える際の注意点
下地調整や下塗り材の選定
ALC壁を塗り替える際は、下地調整や下塗り材の選定がとても大事です。
ひび割れの補修やシーリング処理を適当に行い、下地塗り材を間違えてしまうと、せっかく塗装を行っても「耐久性」が低下してしまい、仕上がりもよくありません。
コーキング工事
そのほか、ALC壁の場合、施工業者によってはコーキング処理を省くところもあります。
サイディング壁と違い、見た目で劣化がそこまで現れずらいためです。ですが、ひび割れが発生すると雨漏りの原因となります。
動きのある継ぎ目には、塗膜だけでは耐久性に不安が残りますので、ALC壁の塗装を行う際には「コーキング処理」は行っておいた方が良いです。
ALC壁の塗装を行う際は、見積もりの内容をしっかりと確認して検討していきましょう。
最後に
ALC壁はその優れた機能を保つためにも、定期的なメンテナンスが何より大事です。
他の外壁材同様に、ひび割れ、塗膜の劣化などが起きるため、塗装による保護が必須となります。
塗り替え費用に関しては、一般的な外壁塗装とほとんど変わりません。
外壁の劣化状況を定期的に確認して、適切な時期に外壁塗装を行っていきましょう。