住宅の新築時やメンテナンスで行う塗装工事と防水工事では、特徴や役割が違うことをご承知でしょうか。
どちらも欠かせない重要な仕上げ工事となります。とくにメンテナンスでは、間違った認識のまま工事を依頼することで適切な作業が出来ないこともあります。
そこで今回は、メンテナンスを行う際に知っておきたい塗装工事と防水工事の違いについて解説していきます。
塗装工事とは?その特徴について
塗装工事の役割は、屋根材や外壁材など建物の美観を保つことと素材の劣化を防ぐための保護を同時に行うことです。
建物は紫外線や雨や風などに常にさらされているため、日々劣化が進んでいます。外壁が劣化していくことで、外観には色褪せや軽微なひび割れなどの美観を損なう症状が現れてきます。
塗装工事を行うことで、色褪せや軽微ばひび割れなどの劣化症状を改善しつつ、美観を保つことが可能になります。
特徴
塗装工事は、建物に使われている素材に合わせて最適な塗料を使って工事を行います。
塗料にはさまざまな種類があり、素材との相性や下塗りと上塗りとの相性など最適な組み合わせで塗装を行うことが重要です。最適な組み合わせで塗装することで、最大限の機能を発揮することが可能になります。
注意点として、建物の美観や素材の保護を目的としているため、塗装(塗膜)単体では「ひび割れや剥離」などに対する補修や修理は出来ません。
そのため、傷みのある素材に対しては、シーリング材や補修材などを活用して、補修しながら塗装を行っていくことが一般的です。
塗料の種類
水性・油性塗料
外壁塗装に使用する塗料の種類には、大きく分けて「水性塗料」と「油性塗料」の2種類があります。塗料の希釈に水を使用する水性塗料と、シンナーなどの有機溶剤を使用する油性塗料です。
一般的には油性塗料の方が耐用年数が長く、施工費用も高くなる傾向にあります。しかし環境問題などから水性塗料を使用するケースも増えています。さらに水性塗料の普及と共に耐用年数などの改良が進んでいるため、現在の水性塗料と油性塗料では耐用年数に大きな差はなくなってきています。
1液性・2液性塗料
また水などによって希釈するだけで使用できる「1液性の塗料」と、主剤と硬化剤を混ぜて使用する「2液性の塗料」があります。
この2つでは、「2液性の塗料」の方が耐用年数は長くなります。
塗料のグレード
塗料のグレードは、一般的に塗料に含まれている樹脂によってランク付けされていて、そのグレードによって耐用年数や施工費用は異なります。
塗料のグレードは「アクリル塗料」、「ウレタン塗料」、「シリコン塗料」、「フッ素塗料」の順番とされています。さらに塗料に含まれる樹脂には関係なく「ラジカル制御型塗料」というタイプが加わっています。また、「光触媒塗料」や「無機塗料」といった高耐久性と言われている塗料や「遮熱塗料」や「断熱塗料」のように機能性を付与した塗料もあります。
素材別の塗料の種類
シーラー、フィーラー
サイディングやモルタル外壁の塗装では、下塗りに「シーラー」や「フィラー」を使用します。シーラーやフィラーには既存の外壁材と新しい塗料の密着性を向上させる効果が期待できます。さらにフィラーには既存の外壁の凹凸を平らにする機能もあります。
錆止め塗料
トタン外壁などの金属部分の塗装では下塗りとして「錆止め塗料」を使用します。錆止め塗料にも1液性と2液性の塗料がありますが、2液性の方が錆止めの効果が強くなります。
浸透性塗料
木部の塗装では、仕上げの質感によって使用する塗料が異なります。木目を活かした仕上がりにする場合には「浸透性の塗料」を使用することで、木材の質感を残すことができます。
防水工事とは?その特徴について
防水工事の役割は、水を建物の内部に入れないために防水層の形成を行うことです。塗装工事と違い、建物の美観や素材の保護という観点で工事が行われることはありません。
雨水の侵入を防ぐことが目的であり、「雨漏り対策」や「雨漏り修理」でも行われます。
防水工事の場合は、防水層の形成後、長期間放置して劣化が進んでしまうと、そのまま雨漏りに直結するため注意が必要となります。
特徴
防水工事は、建物の構造や防水層の設置場所などから、最適な防水工事を選んでいきます。
施工方法は「FRP防水」、「塗膜防水」、「シート防水」、「アスファルト防水」、「シーリング防水」があります。
それぞれ、施工手順、材料、期間、費用が異なります。
場所別の施工方法
ベランダやバルコニー
住宅の防水工事でもっとも多い施工場所はベランダやバルコニーです。一般の住宅では防水工事として「塗膜防水」や「FRP防水」で施工されますが最近では「FRP防水が主流」となっています。
FRP防水は船などにも使われる施工方法で施工後の防水性能の高さと軽量に仕上がることができるため、住宅のベランダやバルコニーの防水工事として最適な方法です。
陸屋根や屋上
陸屋根やパラペットのある住宅の防水工事では、施工面積によって「塗膜防水」と「シート防水」が使い分けられています。
一般的には、複雑な形状の場合は「塗膜防水」が多く、面積が広い場合には「シート防水」が採用されています。
住宅よりも施工面積が大きくなるアパートやマンションなどの屋上で採用されることが多い防水工事です。
塗装工事の施工方法
塗装工事の施工方法は主に、ローラー塗装と吹き付け塗装に分けられます。ここでは、それぞれの塗装方法について解説していきます。
ローラー塗装
住宅の塗り替えなどで一般的に行われている施工方法が「ローラー塗装」です。
使われるローラーにはさまざまな種類があり、最終的な仕上がりにもローラーの種類が関係しています。またマスチックローラーなどの柄を付けるためのローラーもあるので、部分的な補修などでも既存の柄に合わせた仕上がりが可能になります。
このローラーと刷毛を使って塗装工事を行うことが一般的です。
吹付け塗装
新築住宅などで行われている施工方法に「吹き付け塗装」があります。
少し前までは吹き付け塗装による塗り替えなども頻繁に行われていましたが、ローラー塗装が広まったことで吹き付け塗装での塗り替え現場は減ってきています。
しかし、石目調などの複雑な仕上がりにする場合には吹き付け塗装でなければ工事ができません。また広範囲の塗り替えを効率的に行えるので、大型の建物や公共工事ではまだ吹き付け塗装が選択されています。
防水工事の施工方法
防水工事の施工方法は、建物の構造や防水層を形成する場所によって異なります。また塗装工事と関係の深いシーリング工事も防水工事のひとつです。ここではそれぞれの防水工事ついて解説していきます。
FRP防水
FRP防水は、ガラス繊維のマットを張って、樹脂を塗り防水層を形成して仕上げていく工法です。
工期が短く、軽量な点が特徴です。
強度の高い防水層を形成することができるため、使用頻度の高い住宅のバルコニーなどでも安心して施工することが可能です。
塗膜防水
塗膜防水は、ウレタンなど液状になった防水材を下地に「2~3回」塗装することで防水層を形成する施工方法です。
幅広く使われており、液状なため複雑な形状の防水層でも簡単に形成することが可能です。
シート防水
シート防水は、ゴム製や塩ビで出来たシートを使った施工方法です。
住宅のバルコニーなどよりもアパートやマンションの共用部や、ビルの屋上などの広範囲での防水工事に採用されています。FRP防水や塗膜防水と違い、塗料などの乾燥時間がないので工期の短縮やコスト削減にも効果が期待できます。
シーリング工事
シーリング工事は、防水工事の中でも塗装工事に近い工事内容です。外壁材と外壁材の間や窓などの開口部まわりに充填された防水材がシーリングです。
シーリングは経年劣化によってひび割れや剥がれなどの症状が起こります。そのため定期的にシーリング材の打ち替えや増し打ちが必要になります。また、シーリング材自体の耐候性はあまり高くないので塗装工事と同時に行うことが多いです。
塗装屋さんと防水屋さんは違うので注意しよう!
塗装工事と防水工事では、特徴や役割が違うため、施工する職人も異なります。
施工箇所・施工方法(塗膜防水以外)も違いますし、工事に必要な知識や経験も違ってくるので、間違えないように注意しましょう。
<住宅リフォームの場合>
塗装屋さん:屋根や外壁などに塗料を塗ってメンテナンスを行ってくれる職人です。
防水屋さん:ベランダの床や陸屋根、屋上などをシートや塗膜で防水層を形成してメンテナンスや雨漏り修理を行ってくれる職人です。
よくある内容として、外壁塗装と一緒に「シーリングやベランダ防水」がセットになってくるため、まとめて塗装屋さんに依頼することもあるかと思います。
しかし塗装屋さんは本業ではないため、経験が浅い職人もいるので、仕上がりに影響がでることも多いです。
そのため依頼する際は、しっかりと実績を確認した方が良いでしょう。
反対に防水屋さんが、外壁や屋根の塗装工事を行ってることはほとんどありませんので、間違って依頼する事はないでしょう。
まとめ
塗装工事と防水工事の違いをしっかりと把握されている方はあまりいません。
塗装工事では主に建物の美観に関わる仕上がりが専門です。また防水工事では、建物を水による劣化や腐食から守る防水層の形成が専門です。
塗装工事と防水工事では目的や役割が違うため、同じような工事であっても、できれば専門の職人への依頼がおすすめです。